合理的配慮は医療機関でどう実践する? がん患者が「助かる」ちょっとした配慮10例

「合理的配慮が義務になったと聞いたが、医療機関では具体的に何をすればいいのか分からない」
「車いすやスロープのような設備の話だけでいいのだろうか」

2024年4月から、改正障害者差別解消法により、病院やクリニック、薬局などの民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務づけられました。一方で、現場からは「何をどこまですればいいのか」という声をよく聞きます。

この記事では、白血病と20年以上付き合ってきたがん患者の立場から、医療機関で今日からできる「ちょっとした配慮」を10の例でご紹介します。どれも大きな設備や費用は必要ありません。

合理的配慮とは:特別なことではなく「困りごとを一緒に減らすこと」

合理的配慮とは、障害のある人から「こうしてほしい」という申し出があったときに、負担が重すぎない範囲で、困りごとを取り除くための対応をすることです。

ここでいう「障害」は、障害者手帳を持っているかどうかだけで決まるものではありません。見た目では分からない内部障害や、病気による体調の変化で困っている人もいます。がんの治療中の人や、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)を持つ人も、その一人です。

そして大切なのは、「何に困っているか」「どうしてほしいか」を、本人と話し合いながら決めることです。法律やガイドラインの詳しい内容は、内閣府などが公開している資料もあわせてご確認ください。

がん患者が「助かる」ちょっとした配慮10例

1. 検査室や会計への道案内を、もう一歩ていねいに

体調が悪く、不安でいっぱいのとき、患者は一度の説明では場所を覚えられません。「突き当たりを右」だけでなく、目印や、検査のあとにどこへ行けばいいかまで伝えてもらえると安心します。(参考:検査室へ迷子…!? 患者さんの不安を解消する「親切な道案内」)

2. 処置や検査の前に「何を・どのくらい」を伝える

これから何をするのか、どのくらい時間がかかるのか、痛みはあるのか。事前のひと言があるだけで、患者は心の準備ができます。(参考:処置・検査前の説明で患者さんの不安を解消)

3. 待ち時間の目安を伝える

長く座っているのがつらい患者もいます。目安の時間が分かれば、横になれる場所をお願いしたり、いったん離れたりと、自分で調整できます。(参考:医療現場の「待ち時間クレーム」、どう防ぐ?)

4. 大切な話は、場所と時間を選ぶ

病名や治療、体のことなど、人に聞かれたくない話を、待合室や大部屋で話されるのはつらいものです。私の仲間には、若い頃、とても個人的な処置のために個室を用意してもらえず、深く傷ついた人もいます。話す場所を少し変えるだけで、守れる尊厳があります。(参考:AYA世代のがんと、医療接遇の欠如)

5. 見た目で判断しない

がんの治療中の人やストーマを持つ人は、外見からは困りごとが分かりません。「元気そうなのに」と思われて、多目的トイレや優先席を使いづらいと感じている人もいます。見えない困りごとがあるかもしれないと想像することが、配慮の出発点です。(参考:なぜ「元気なのに多目的トイレ?」は誤解なのか)

6. 病名を知っても、態度を変えない

私は毎日を幸せに暮らしていますが、病名を伝えた途端に相手の態度が変わる経験を、今でもします。患者が求めているのは、過剰な気づかいではなく一人の人間としての普通の接し方です。(参考:患者の本音は「病気より私を見て」)

7. 大切なものは両手で受け取る

診察券やお薬手帳を受け取る動作ひとつにも、相手をどう見ているかが表れます。体調が悪いときほど、こうした小さな動作から「大切にされている」と感じます。(参考:患者が感動した「両手の動作」とは)

8. 忙しいときほど「いつも通り」に

ため息や、物を置く音、早口。医療者に悪気はなくても、患者は「今は話しかけてはいけない」と感じ、困っていることを言い出せなくなります。申し出をしやすい雰囲気そのものが、合理的配慮の土台です。(参考:どんなに忙しくても「いつも通り」が大切)

9. お金や制度の不安にも目を向ける

治療が長くなると、医療費や仕事の不安も大きくなります。高額療養費制度などは仕組みが複雑で、患者だけでは分かりにくいものです。相談できる窓口を一言伝えてもらえるだけで、安心につながります。(参考:なぜ高額療養費制度は「複雑」なのか?)

10. 「どうしてほしいですか」と本人に聞く

配慮の正解は、人によって違います。良かれと思った対応が、かえって負担になることもあります。迷ったときは、「何かお困りのことはありますか」「どうするとやりやすいですか」と本人に聞くこと。これが、合理的配慮のいちばんの基本です。

職員全体で取り組むために

合理的配慮は、担当者一人が頑張るものではありません。職員全員が同じ考え方を持つために、次のような取り組みがおすすめです。

  • 研修で「患者の困りごと」を知る:当事者の話を聞くと、見えない困りごとを想像しやすくなります
  • 申し出の受け方をそろえる:申し出を受けたときの声かけや、相談先を職員で共有しておきます
  • 対応例を記録して共有する:うまくいった対応を共有すると、次の配慮につながります

私の医療接遇研修では、がん患者として実際に感じてきた困りごとや、救われた対応を具体的にお話しし、「見えない困りごとに気づく視点」を職員の皆さんと一緒に考えます。研修の組み立て方は病院の接遇研修、何をどのくらいやる?でもご紹介しています。

まとめ:合理的配慮は「接遇」の延長線上にある

合理的配慮というと、設備や制度の話に思えるかもしれません。しかし、患者の立場から見ると、その多くは「相手の困りごとに気づき、一緒に減らそうとする」という、接遇の延長線上にあります。

「合理的配慮について職員研修をしたい」「接遇研修とあわせて学べる内容を検討している」という段階でも、お気軽にご相談ください。

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