病院の接遇研修、何をどのくらいやる? 内容・時間・進め方の実例(90分版/半日版)
「来年度の接遇研修、何をどのくらいの時間でやればいいのだろう」
「去年と同じ内容でいいのか、もっと現場に効く形にできないか」
研修を企画する看護部や事務部の方から、よくご相談をいただきます。接遇研修は、内容と時間の組み立て方で、受講後に現場が変わるかどうかが大きく変わります。
この記事では、私が病院・介護施設で実際に行っている医療接遇研修の流れをもとに、90分版と半日版の進め方の例を、企画する側の目線でご紹介します。講師の選び方については、医療接遇研修の講師はどう選ぶ? 失敗しない5つのチェックポイントにまとめています。
まず決めたい3つのこと:目的・対象・時間
研修の中身を考える前に、次の3つを決めておくと、内容がぶれません。
- 目的:新人に「患者の気持ち」の土台をつくるのか、患者アンケートやクレームなど具体的な課題を改善したいのか
- 対象:新規採用職員、現場の職員全体、受付・事務、多職種合同など
- 時間:オリエンテーションの1コマ(60〜90分)か、ワークを含めた半日(3時間程度)か
目安としては、新人向けなら90分の講演形式、現場の課題を解決したいなら半日のワーク形式が組みやすいです。
90分版:新規採用職員向けの進め方(例)
私はこれまで、某病院や大手薬局企業の新規採用職員研修で、長年にわたり接遇研修を担当してきました。研修タイトルは、看護師さんが名付けてくれた「患者の立場から〜接遇の真の意味を考える〜」です。その流れをもとにした、90分の進め方の一例です。
| 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 10分 | 導入:医療の接遇は「おもてなし」ではなく「おもいやり」 | サービス業のマナーとの違いをつかむ |
| 30分 | 患者の体験:がんの疑いから告知直後の2週間、心の中で何が起きていたか | 患者の不安を、自分のことのように感じる |
| 15分 | 全人的苦痛(トータルペイン)との対比:仕事・家族・将来を奪われる苦しみ | 教科書の知識を、実感のある理解に変える |
| 20分 | 設問ワーク:「自分ならこの場面でどう声をかけるか」 | 聞くだけで終わらせず、自分ごとにする |
| 15分 | 患者が求めるコミュニケーションと、明日からできること | 現場で使える行動に落とし込む |
ポイントは、話を聞く時間と、自分で考える時間を交互に入れることです。新人は緊張しているので、正解を答えさせるよりも「自分ならどうするか」を考える問いのほうが、記憶に残ります。
(参考:具体的な研修内容・資料ダウンロード)
半日版(3時間):現場の職員向けの進め方(例)
すでに現場で働いている職員向けには、講演に加えて自分たちの職場の場面で考えるワークを入れると、研修後の行動が変わりやすくなります。
| 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 60分 | 講演:患者の立場から見た医療現場と接遇 | 患者の視点を共有する |
| 30分 | セルフチェック:接遇チェックリストで自分と職場を点検 | 自分の「できている・できていない」に気づく |
| 10分 | 休憩 | |
| 50分 | グループワーク:自院でよくある場面(受付、待ち時間、検査前の説明など)で、患者が本当に求めている対応を話し合う | 「なぜその対応が必要か」を職員同士で納得する |
| 30分 | 発表と行動宣言:明日から変える行動を1つ決める | 研修を現場の行動につなげる |
セルフチェックには、私が作成した医療接遇セルフチェックリスト(全30項目)を使うこともできます。研修の前後で同じチェックをすると、変化が見えやすくなります。
対象者別に意識したいポイント
新規採用職員
マナーの細かい型よりも、「患者はどんな気持ちで病院に来ているのか」という土台を最初に持ってもらうことが大切です。土台があれば、現場で迷ったときに自分で考えられるようになります。
現場の職員・中堅職員
経験のある職員ほど「分かっている」と感じやすいものです。患者アンケートの結果や、実際にあったご意見を題材にすると、自分ごととして受け止めてもらいやすくなります。患者からの厳しいご意見やカスハラへの対応を見直したい場合は、医療現場のカスハラは「接遇」で減らせるのか?もあわせてご覧ください。
受付・医療事務
患者が最初に接するのは受付です。最初の数秒の印象や、待ち時間への声かけなど、具体的な場面に絞ると効果的です。
介護施設
介護の現場では、「決まりだからやる」接遇は定着しにくいものです。ノックや挨拶などの一つひとつを、入居者様の「大切にされたい」「自分で決めたい」という気持ちと結びつけて考えると、スタッフの行動が変わります。(参考:有料老人ホームでの接遇研修)
研修の効果を高める3つのコツ
- 事前に課題を共有する:患者アンケートや現場の声を講師に伝えておくと、内容を自院向けに合わせられます
- 研修後に振り返る:1〜3か月後に同じチェックリストで点検すると、行動が続きやすくなります
- 毎年続ける:接遇は一度で完成するものではありません。新人研修に毎年組み込むことで、病院全体の空気が少しずつ変わっていきます
オンラインでも実施できます
会場に集まるのが難しい場合は、Zoom などのオンラインでも実施できます。設問ワークやチャットを使えば、オンラインでも参加型の研修になります。
まとめ:時間よりも「何を持ち帰ってもらうか」
90分でも半日でも、大切なのは受講した職員が、明日からの行動を1つでも変えられることです。研修の目的と対象がはっきりしていれば、時間に合わせた最適な組み立てができます。
「来年度の新人研修に組み込みたい」「今年の患者アンケートの結果を改善したい」など、ご相談の段階でも構いません。貴院の状況に合わせて、内容と時間をご提案します。費用の目安は講師費用のページをご覧ください。

