薬剤師がACPを行う前に知っておくべきこと。「死ぬ準備」ではなく「生き方」を支える対話技術
大阪府・河内薬剤師会主催の研修会に登壇いたしました。
テーマは、「最期まで自分らしく生きるためのACP(アドバンス・ケア・プランニング)」。
近年、薬剤師もACPに関わることが期待されていますが、
現場では「どう切り出せばいいか分からない」「患者さんを傷つけないか怖い」という声も聞かれます。
がんサバイバーであり薬剤師でもある私から、ACPの本質と、
医療者が陥りやすい「心理的な落とし穴」についてお話ししました。
1. ACPの疑似体験:あなたならどうしますか?
まずは、参加者の皆様にACPを「自分ごと」として捉えていただくため、いくつかの問いかけを行いました 。
「生きている時間が限られていると分かったら、何を優先しますか?」
「生き続けることは大変かもしれないと感じるのは、どのような状態ですか?(言葉が出ない、体が動かない…)」
「もし自分の意思を伝えられなくなったら、誰に代弁してほしいですか?」
これらを考えるプロセスこそが、ACPそのものです。
医療者がまず自分の価値観を知らなければ、患者さんの価値観を引き出すことはできません。
2. 医療者が持つ「ランク(力)」の自覚
講演の核心としてお伝えしたのが、**「ランク(力の差)」**の話です 。
アーノルド・ミンデルが提唱する概念ですが、
医療従事者は無意識のうちに「高いランク(社会的地位や専門知識)」を持っています。
ランクが高い人(医療者): 自覚がなく、無邪気に振る舞う。
ランクが低い人(患者): 相手の顔色を鋭敏に感じ取り、萎縮する。
この構造に気づかず、上から目線で「どうしたいですか?」と聞いても、
患者さんは「先生の言う通りでいいです」と本音を隠してしまいます。
これが**「ACPの心理的落とし穴」**です。
薬剤師が自らのランクを下げ、患者さんと同じ目線に立った時、初めて本当の対話が始まります。
3. 書類(AD)を作ることがゴールではない
ACP(人生会議)と、AD(事前指示書)は違います 。
紙に書かせて終わりではありません。
信頼関係(ラポール)を築き、患者さんの「人生の物語」を聴き、
価値観を共有し続ける**「プロセス」**こそが重要です。
さらに学びを深めたい方には、**「ACPiece」**などの専門的な研修会への参加もお勧めしました。
薬剤師が「薬」だけでなく「人生」にも寄り添える職能へと進化することを願っています。
しあわせです感謝
薬剤師に「ACPの実践力」を
「ACPの必要性は分かるが、現場での実践が難しい」
そんな薬剤師の方々に、知識だけでなく「マインド(ランクの自覚)」と「スキル(対話法)」を
セットで学べる研修をご提案します。






