【哲学】どん底にこそ「バネ」がある。がん告知の絶望を心理学(システム1・2)で読み解く「回復の3部作」

がんの告知、再発、治療の行き詰まり。
死という冷たい現実がすべてを覆い尽くした時、人は想像を絶する絶望感に呑み込まれます。
「前向きになれない」「出口が見えない」 そう自分を責めてはいませんか?
実は、その反応は脳の仕組みとして「正常」なことなのです。
この記事では、ノーベル賞心理学者ダニエル・カーネマンの理論(システム1・2思考)を借りて、
どん底から「生きる力」を取り戻すための私の哲学をお話しします。
第一章【枯れる時期】:絶望の底にこそ「バネ」がある
極度のストレス下に置かれたとき、人間の脳は生存本能に基づき、
**「システム1思考(直感的・自動的)」**へと強制的に切り替わります。
これは緊急時には有用ですが、深い熟慮(システム2)を欠くため、視野が極端に狭くなります。
この状態では、たしかに「死」という出口しか見えなくなるのも無理はありません。
私は、この魂がすべてを失ったかのように見える時期を**「枯れる時期」**と呼んでいます。
この時期に、私はあえて「頑張れ」とは言いません。
むしろ、徹底的に落ち込むことを勧めます。
思い切り泣き、底の底まで沈み込むことです。
なぜなら、物理法則のように、精神的な世界にも必ず「底」があるからです。
どん底まで辿り着けば、人はもはやそれ以上落ちようがありません。
そこから先は、跳ね上がる「バネ」の力しか残されていないのです。
冬の街路樹を見てください。枯れたように見えますが、
彼らは死んだのではなく、
来るべき春のために「じっと英気を蓄えている」だけなのです。
第二章【根を張る時期】:「どう生きるか」という問いへの回帰
どん底に辿り着き、ある種の開き直りを感じる頃、奇妙なほど静かな落ち着きが訪れます。
「泣いていても何も解決しない」という真理が、誰かの励ましではなく、
自らの内側から湧き上がってくるのです。
この悟りを得たとき、脳の働きは**「システム2思考(熟慮・論理的)」へと移行します。
ここで初めて、死という「ゴール」ではなく、そこへ辿り着くまでのプロセス、
つまり「どう生きるか」**という根源的な問いへ意識が向くようになります。
私はこの時期、社会的な役割や義務から完全に解放され、子供の頃に戻ったかのように振る舞いました。
何にも縛られず、半年間もロールプレイングゲームに没頭しました。
この徹底的な「自己の解放」こそが、心と身体が失った活力を、
地面の奥深くで吸収する**「根を張る時期」**だったのです。
第三章【新芽が出る時期】:自分を取り戻す人生の再起動
「枯れる時期」と「根を張る時期」を誠実に生き抜いた後、
ある日突然、生き方そのものが変換する日がやってきます。
それは、何かが「変わる」というよりも、
深い霧の中から**「本来の自分を取り戻す」**という感覚に近いかもしれません。
気づけば、落ち込む前よりも遥かに充実し、濃密な人生を送っている。
まるで、街路樹たちが初夏に一気に生命を爆発させるように、私たちの魂にも新緑が芽吹き出すのです。
困難のただ中にいるあなたへ
今、あなたが「枯れる時期」にいるなら、焦らないでください。
それは必要なプロセスです。
この私の経験と哲学が、
暗闇の中にある誰かの足元を照らす灯りになれば、これ以上の幸いはありません。
この命を与えてくれたことに、しあわせを感じ、ただ感謝しています。
しあわせです感謝
「今は枯れていても大丈夫」と伝えたい
もし今、出口のないトンネルにいると感じているなら、一人で抱え込まずにお話ししませんか?
私が運営する「がんサポ喫茶 止まり木」や、講演・研修の場では、
こうした心の動きについてより深く、対話を通してお伝えしています。

