【薬剤師の質問力】なぜ「傾聴」の後なのか? 患者の本音を引き出す「問う技術」とアンコンシャス・バイアス
【薬剤師の質問力】なぜ「傾聴」の後なのか?
患者の本音を引き出す「問う技術」とアンコンシャス・バイアス

薬剤師研修研究所の「ノンテクニカルスキル講座」。
全5日間のプログラムも佳境に入った4日目の後半、いよいよ**「質問スキル」**のセッションに入りました。
なぜ、最初ではなく、あえて終盤に「質問」を持ってきたのか?
そこには、医療コミュニケーションにおける重要な意図があります。
1. 「質問」は強力な武器ゆえに、危険である
コミュニケーションスキルは複合的なものです。
その中でも「質問」は、相手の思考を動かし、答えを引き出す強力なパワーを持っています。
しかし、強力だからこそ、**土台となる「傾聴」や「ラポール(信頼関係)」**ができていない状態で使うと、
それは「尋問」や「詰問」になってしまいます。
知らず知らずのうちに患者さんを追い詰め、苦しめてしまうことさえあるのです。
だからこそ、まずは「聴く力」を徹底して身につけ、相手を受け入れる土壌を作った上でなければ、
「問う力」は授けられないと考えています。これは医療接遇の基本でもあります。
2. 「無知の知」とアンコンシャス・バイアス
良い質問をするための大前提は、**「私は相手のことを何も知らない」**というスタンスに立つことです。
哲学の言葉に「無知の知(自分が知らないということを自覚していること)」がありますが、
これは現代の**「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」**の克服にも通じます。
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「この患者さんは高齢だからこうだろう」
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「この薬を飲んでいるからこうだろう」
脳はエネルギーを節約するために、勝手に「知っているつもり」になろうとします。
このバイアスに気づき、「私はまだ、目の前の患者さんの本当の苦しみを知らない」と謙虚になること。
そこから初めて、相手の心に届く「真の質問」が生まれます。
3. 相手を知るために、問いを磨く
質問力とは、単なるフレーズ集ではありません。
自分の思い込み(バイアス)を外し、真っ白な状態で相手に関心を向ける「あり方」そのものです。
講座では、具体的な質問技法とともに、このマインドセットを実践形式で学んでいきます。

「尋問」ではなく「対話」をしよう
あなたの質問は、患者さんの心を開いていますか? それとも閉ざしていますか?
信頼関係を深めるための「質問の極意」を、共に学びましょう。


