【講演録】命に限りがあると気づいたとき。がんサバイバー薬剤師が語る「患者が本当に求めていること」

薬剤師の皆さん、目の前の患者さんをどう見ていますか?

「処方箋を持ってきた人」ですか?

それとも「生活を持った一人の人間」ですか?

佐野市薬剤師会主催の特別講演会に登壇いたしました。

テーマは、「命に限りがあると気づいたとき ~薬剤師に求めること~」

がんサバイバーであり薬剤師でもある私が、闘病中に感じた「患者の本音」と、

これからの薬剤師に求められる役割について、74枚のスライドを使って熱く語りました。


 

1. 「患者メガネ」と「人メガネ」

 

私たちは無意識のうちに、相手を「患者」というフィルター(患者メガネ)を通して見てしまいます。

「患者だから、何もできないだろう」「患者だから、大人しく従うべきだ」

しかし、患者は「患者である以前に、一人の生活者(人)」です。

大黒柱としての役割、親としての役割、夢を追う一人の人間としての顔を持っています。

「人メガネ」を掛けて、その人の背景にある生活や人生を見ること。

それが信頼関係(ラポール)の第一歩です。

 

2. 薬局の「ブラックボックス」を解消する

 

薬局では、処方箋やお薬手帳の情報(対物情報)は把握していますが、

患者さんの**「家での生活(対人情報)」**はブラックボックスになりがちです。

「実は、副作用が怖くて飲んでいない」

「市販のサプリメントを大量に飲んでいる」

「家族に迷惑をかけたくないという葛藤がある」

こうした「薬剤師が知らない情報」を引き出すために必要なのが、

**「好意的に聴く(傾聴)」スキルと、「質問力」**です。

詰問ではなく対話をすることで、初めてブラックボックスが開かれ、本当の服薬指導が可能になります。

 

3. 「かかりつけ薬剤師」は命の伴走者

 

がん告知後、患者は「魔の2週間」と呼ばれる絶望の時期を過ごし、その後も常に不安と隣り合わせです。

そんな時、「いつでも相談できる薬剤師」がいることは、ただの安心感を超えて「生きる力」になります。

私自身、抗がん剤の副作用や飲み合わせについて、信頼できる薬剤師に支えられました。

薬剤師は、単に薬を渡す人ではありません。 患者さんの人生(命)に伴走する、かけがえのないパートナーです。

佐野市の薬剤師の皆様の熱い眼差しに、地域医療の明るい未来を感じた一日でした。

しあわせです感謝

 

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